ブログ京橋店

2018.6.28

日本料理のさしすせそ「し(塩)」編

日中は汗ばむくらいの初夏の陽気が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
前回は日本料理の「さしすせそ」というお題で砂糖についてお話させて頂きました。
今回は塩についてお話をしてみたいと思います。

 

 

江戸時代に編纂された逸話集「古老諸談」によると、かの徳川家康が側室に「この世で一番うまいものは何か?」と尋ねると「一番うまいものは塩。一番まずいものも塩です。山海の珍味も塩の味付け次第。また、どんなうまいものでも塩味が過ぎると食べられなくなります」と答えたという逸話があります。
料理に慣れていても一番難しく、しばしば失敗してしまうのは「塩加減」。最後の味見の段階で「塩味が足りない」と感じて味を調えるときに少しでも入れすぎると、塩辛い仕上がりになり、途中までおいしくできていたのにせっかくの料理が台無しになってしまいます。
しかも1度塩辛くなってしまうと後戻りができないのも塩。塩が決まれば味が決まる。塩は料理の味付けの要です。

 

歴史

塩の歴史→世界四大文明は大河の流域に発祥しました。そこは塩の採取できる土地が近くにあり、水と塩は人が生き、文明を築くために不可欠なものだったのです。
「すべての道はローマへと通ず」といわれた古代ローマ。最初に造られた道路は「ピア・サラリア」(塩の道)。塩が採れた街からローマに塩を運ぶための道です。また古代ローマ軍は兵士の給料として塩を払ったという説から、塩を語源とする「sarary(サラリー)=給料」が生まれたとされています。
日本で塩をつくり始めたのは縄文時代の終わり頃。海藻を燃やし、残った灰を塩代わりに使っていました。その後、「万葉集」などにも登場する「藻塩焼き」。海藻に海水をかけて濃い塩水を集め、これを煮詰めるという塩作りが考えられました。

現在は、イオン膜・立釜法による工場製塩が主流ですが、濃い塩水をつくり、これを煮詰めるいう製法は塩田製法の時代から変わっていないのです。

 

味の違い

塩の味は主成分の塩化ナトリウムの割合や「にがり」などの量、結晶の粒の大きさや形、成分によっても異なります。塩の結晶の基本の形は正六面体。これを基本としてさまざま形の塩をつくることができます。粒の小さなものは溶けるスピードが速いので「塩辛く」、大きなものはゆっくり溶けるので「まろやか」に。また、天日・平釜法などでゆっくり結晶するとふんわりと、立釜や噴霧乾燥などで素早く結晶したものはサラサラしてキメの細かい塩に。

 

種類

塩の種類→スーパーやデパートの食品売り場をのぞくと、さまざまな塩が並んでいます。その種類は1000種類ともいわれていますが、その違いをご存知でしょうか?意外にも塩の種類はシンプルで、原材料ごとに「海塩」「岩塩」「湖塩」の3つ。そのすべての塩は海水がルーツです。海水が陸地に閉じ込められ、「岩塩」「湖塩」になります。採取した場所、製法、加工の違いによって個性豊かな塩になるのです。

 

「塩」の調理効果

脱水効果→塩には食材に含まれる水分を外に出し、代わりに塩分をしみ込ませる脱水効果があります。これは浸透圧の働きで、漬け物、きゅうりの塩もみ、魚の下ごしらえもこの効果を利用したものです。

たんぱく質の弾力を増す→ひき肉を練り混ぜるときに塩を加えると、お互いにくっつく結着性を高めて弾力を出す効果があります。かまぼこなどの練り製品、ハムやウインナーに弾力を出すのもこの効果によるものです。

抑制効果→一方の味がもう一方の味の強さを抑える抑制効果。酢飯に塩を加えると、塩の抑制効果によって、酢の酸味が穏やかになります。

対比効果→一方の味がもう一方の味を引き立てる対比効果。すいかに塩を振ると甘味が際立つのは、塩の対比効果によるものです。

色止め→青菜をゆでるときに塩を加えたり、りんごを塩水につけるのは、塩分濃度1%の塩水には食材の酸化や変色を防ぐ効果があるためです。料理を美しく仕上げます。

 

今回は塩についてお話をさせて頂きました。いかがでしたでしょうか?
ご清覧、誠にありがとうございました。
香水亭京橋店料理長  越智健介

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