ブログ京橋店
2017.5.19
日本料理の重要な仕事の一つ「煮る」ということ

季節が移り変わり、新緑の芽生えて参りました。
日中は暑くなり、夕方から涼しくなったりいたしますので、皆様お体をご自愛下さいませ。
さて、今回は「煮物」について少しお話しさせていただきます。
煮物について
「煮る」という技術は、日本料理の中でもとても重要な仕事の一つです。
一口に煮物といっても種類が多いばかりではなく、「素材をゆでる」「下茹でをしてから煮る」「蒸してから煮る」「焼いてから煮る」「揚げてから煮る」「炒めてから煮る」等々。加熱法も様々で、大変な仕事です。
いわゆる煮方になるには、昔は20年以上で一人前ともいわれてきました。
煮方には、煮る前の下処理や加熱法、食材の種類や季節によって加熱時間も微妙に変えたりなど、食材に対する細やかな知識が必要です。
野菜の煮物というと人参や午房、里芋など数種類の野菜を取り合わせて作る煮物と思い浮かべたり致しますが、素材を別々に煮た後に盛り合わせた「炊き合わせ」や、野菜をいためて一つの鍋で煮しめた「炒り煮」など、調理法の違いもあります。
また、同じように煮る「野菜の旨煮」、「筑前煮」など煮物料理でも地方によって呼び名が違うこともあります。
関西地方での煮物といえば、煮たものをお椀に盛り付けてすまし汁を張った煮物を「煮物椀」とも呼んでいます。
このように、煮物を区別するのは難しいのですが、いくつか名称をご紹介いたします。
・芝煮:お吸い物風の味付けや、海老や鱚など淡白な素材の煮物
・小煮物:薄味の出汁でゆっくり含ませた煮物
・沢煮:淡白な素材を取り合わせた煮物
・旨煮:野菜や、魚介、肉などを取り合わせ、醤油、みりんで甘辛く煮たもの
・佃煮:魚介、海藻、野菜を醤油、砂糖、味醂で甘辛く煮しめた煮物の保存食
・白煮:白色の食材独活や百合根、白魚など色を生かして煮あげたもの
・青煮:緑色の豆や野菜などを色味を生かした煮物
・艶煮:砂糖、味醂、水あめまどを使って光沢の出るように、煮汁をつめてにあげた煮物
・照り煮:煮あがりに照りを出した煮物
・有馬煮:有馬山椒を使った煮物
・土佐煮:土佐醤油を使った煮物、またはだし汁を効かせたり、粉鰹節利かせた煮物
・難波煮:葱をたっぷり入れた煮物、「南蛮煮」とも呼ぶ
・オランダ煮:素材を一度揚げて醤油、砂糖、味醂で煮たもの
・治部煮:石川県金沢市の煮物で、そぎ身にした鴨肉や鶏肉に小麦粉を付けて濃い味の煮汁で煮たもの。
名前の由来は「じぶじぶ」と煮える音、岡部治部衛門の名前など諸説があります。
その他、兄弟煮や儀助煮など地方の煮物もあります。
こうして改めて並べてみるとその種類の多さに驚きました。
香水亭の会席料理煮物
日本料理の煮物は、家庭料理や郷土料理としても昔から愛されてきたものだと感じております。
炊き合わせなどは酒のあてにもなりますし、ホッと人心地していただければ幸いです。
写真は、香水亭京橋店の今月の会席料理煮物です。
「桜海老の飛龍頭 湯葉あんかけ」をご提供させていただいております。
真心を込めて作り、居心地の良い空間で心行くまで楽しんでいただけるよう心よりお待ちしております。
食材をふんだんに使った季節の会席料理をご用意いたしております。是非ご賞味くださいませ。
歓送迎会なども多くなってくる季節でございます。
この機会に、香水亭京橋店をご利用頂けますよう、従業員一同、心よりお待ちしております。
香水亭京橋店 料理長 輿石修