ブログ京橋店
2019.2.18
調味料の使い方 その2
立春を越え暦の上では春ですがいかがお過ごしでしょうか。
前回は調味料の使い方のお話をさせて頂きました。砂糖までお話をしたので今回は塩からお話をします。
・下ごしらえと塩の作用
塩には強い浸透圧の力とともに、たんぱく質を固める作用があります。
それを最大限に利用したいのが魚や肉の下ごしらえです。
魚や肉を焼く10~15分ほど前に塩を振ると塩の浸透圧で水分が出てきます。これは、塩分濃度の低い内部の水分が、濃度の高い表面に移動してくる塩の浸透圧の作用によるものです。
それと同時に、肉や魚の表面のたんぱく質が固まるので、うまみを閉じ込めて焼くことができます。
また、魚の切り身に塩をしっかりめに振ってたんぱく質を固めておくと、酢締めにした際の身くずれをも防ぐことができます。
・塩で野菜に下味を
野菜をゆでる際に、沸騰した湯に塩を入れると色よく茹で上がるというのはよく知られています。これは、酵素の働きで青菜が黄褐色に変色するのを塩の成分が防いでくれるからです。
塩にはもう一つ、大切な作用があります。湯に加えた塩を野菜に浸透させると、野菜のおいしさが際立ちます。
それに天然塩は、上手に使えば消化不良気味の胃腸に好影響もあります。塩は健康に必要なものでもあります。そして、日ごろ使う塩は、ミネラル分が豊富な自然塩がおすすめです。
酢・醤油・味噌で「味の詰」
「塩梅(あんばい)」が肝心の「す」
「す」は酢。そして酢は「し」の塩と関係が深いです。酢締めの魚や野菜のピクルスは塩と酢のバランスでおいしさが深まります。この場合、酢は単体では成り立ちません。
塩の浸透力で下味をつけ、食材の表面を固めた後に酢で締めることが大切です。
酢は魚の骨まで軟らかくする性質があるので、直接酢で締めると身くずれし綺麗に仕上がりませんし、味も複雑な深みが出ません。
塩梅という言葉はまさしく塩と酢の切っても切れない関係を表現しています。
・酢の抗菌力は武器
酢は殺菌力が強い調味料です。酢の抗菌作用は、酢の主成分の酢酸が微生物の活動や繁殖を防ぐからだといわれます。この抗菌力を利用した代表的なものが寿司や魚の酢締めです。
魚を酢洗いすると表面の微生物の繁殖が防げると同時に、生臭さの成分であるアミン類に反応して臭みが消えます。
また、コハダやサバの酢締めの生魚とは異なる独特の食感は、魚のたんぱく質が酸によって変性し、酸性酵素がたんぱく質を分解することによるものです。
果物や野菜の成分には酵素の働きで酸化し変色する性質がありますが、これも酢の作用で色止めできます。
ちなみに酢は体内に水分を生み出す作用があるので、健康のためにも意識して取りたい調味料です。
黒酢、デザートビネガー等、飲める酢がありますので健康のために飲んでみてはいかがでしたでしょうか?
ご清覧誠にありがとうございました。
京橋店料理長 越智健介