ブログ京橋店
2017.11.6
『料理』と『調理』
清秋の候、街路樹の葉も日を追って色づいてきましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
この度、8月21日より料理長として拝命いたしました、越智健介と申します。
皆様どうぞよろしくお願い致します。
今回、初めてのブログとあって料理人である以上、初心に帰り、初心忘れべからずという思いで『料理』『調理』についてお話しをしたいと思います。
色々な解釈があると思いますが、私の目線でお話をさせて頂けたらと思いますのでご了承くださいませ。
ではまず『料理』とは?
料→はかるということ 理→物事の理が料理の原点であるということです。
料理するには沢山はかることが必要です。
例えば、材料のサイズ、調味料の分量、温度、時間、料理を提供するお客様の気持ち等、はかるということが沢山付いてきます。
理とは?物事の筋道を立てて考えることであり、簡単に言えば理由です。
例えば、イカ刺しの切り方で細かく深い刻みを入れるのも理由があります。イカの身の中で中央部がもっとも甘いといわれています。その中央部を露出させ、口に当たる表面積を増やすため、蛇腹に細かく深い刻みを入れます。
こうすることによって、口に入れた時に甘い中央部が舌に当たり、独特の味わいが生み出されるのです。
しかし1番難しいのは、調理場にいて全部の卓番のお客様を想いながら一人一人に合わせてお料理することです。
カウンターなどでお客様と向かい合えば簡単なのですが、当店のように調理場とお客様が離れている場合は、お客様によってお料理にムラが無いよう、そして調理場で自分を制してどの方のお料理も先入観なしに同じくお出しできるようにするか、というところが1番難しいところであります。
料亭の修業時代、御主人の言葉が今でも頭の中に記憶があります。
「工夫して、心くだくる想いには、花鳥風月みな料理なり」
意味は、工夫をこらして相手のことを心から想えば、あらゆるもの全てが料理になるということです。努力を怠らないよう日々精進するつもりでございます。
話は変わりまして、前者は料理でしたが次は調理に付いて、お話をしたいと想います。
調理とは→食品材料をおいしく食べられるようにするとともに、栄養素の消化吸収を良くし、かつ衛生的に安全な食物を作るためのいろいろな操作(手法)をいい、食物の基本的条件である安全性、栄養性、嗜好性を満たすことであります。
では調理の目的とは?
・いらないものを除き、いろいろな調理操作を加え、食品の消化吸収を増し、栄養価を高める。
・味、色、香りなどを調整し、食欲を増進させる。
・そのままでは食べられないものを食べられようにする。
・食品を衛生的に安全なものにする。
・保存できるようにする。
・食品の配合を考え、バランスのとれた栄養がとれるようにする。
これらが調理目的であります。
次は調理操作についてです。まず非加熱調理操作です。
物理的調理操作→軽量、洗浄、浸漬、切断、解凍、粉砕、攪拌、混合、混捏、圧搾、ろ過、伸展、形成、冷却、凍結などです。
科学的調理操作→漂白、着色、着香、脱臭、防腐、乳化、発酵、凝固(豆腐)
続いて加熱調理操作です→茹でる、煮る、蒸す、焼く、揚げる、炒める、煎る、電子レンジ、電磁調理器、スチームコンベクションによる加熱。
そして最後に
美的調理操作です→盛り付け、配膳、食卓の演出(テーブルコーディネート)、サービス、食事環境などです。
今回は『料理』『調理』についてお話しをさせて頂きました。
次回は食文化や歴史についてお話しをしていきたいと思っております。
これから寒さも厳しくなってきます。是非当店で温かい料理を召し上がってみてはいかがでしょうか。
皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。
ご清覧、誠にありがとうございました。
香水亭京橋店料理長 越智健介