ブログ新橋店

2017.8.19

器について

はっきりしない天気が続いていますが、皆様どの様にお過ごしですか。

今回は器の話をしたいと思います。

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食事はいただいておいしいことが第一です。それには味だけでなく、見た目の美しさも大事なので「美味しい」と書くのでしょう。とりわけ日本料理は、色調の美しさが重んじられ盛り付ける人の手ぎわとセンスが大きく影響します。

どのように盛り付けると美しく感じるかは、時代、伝統、個人差があります。

 

我が国の焼き物は、中国の技法を習い青磁、白磁や天目茶碗のように見事なものを作ろうと励みますが、桃山時代になって、中国や西欧とはいささか異なる美を発見します。この時代の志野や織部の茶碗は、丸いといっても、正確な円形ではありません。窯の中で偶然に歪んだり、破れたりした中からも、美しさを見つけ出しています。釉薬の不均衡に流れ、火色があったり、絵もあっさりと描いてあります。それらは中国の焼き物のように完璧で精緻ではないけれど、あたたかさ、柔らかみがあって、親しみを感じます。

 

そういう美を発見したのが茶人です。

茶人が好む赤絵の鉢について面白い話があります。中国明大の赤絵は細密な文様がため息の出るほどびっしり描いてかります。ところが、明末になり、国の財政が逼迫してくると、官窯ですから絵の具を節約して、文様が簡単になります。その簡単な筆づかいを面白いと、茶人が珍重したのです。

そういう気持ちは現在の私達にも通じると思います。茶道の食事を懐石と言いますが、茶人たちはその食器に、伝統的な漆塗り、中国や朝鮮から舶載されたもの、日本独特の焼き物をうまくとり合わせて用いました。料理の盛り方も当然変わってきます。これが今日に受け継がれ、洗練されて、日本料理の盛り付けになりました。

日本料理は食器の種類が多く、漆器、陶磁器、ガラス器、金属器、竹、木地物など、それぞれに形、色、文様が異なります。その中から季節や料理を考えて、一品ごとに選ぶので、選択がよければ料理が引き立ちます。特に懐石風料理には、献立全体の食器の調和も考えなければなりません。

 

漆塗りのお椀は冷めにくいので、おつゆのものに最適です。陶器は土物といい、備前、信楽、伊賀、志野、織部、瀬戸、唐津、仁清、三島、楽などで、やわらかくあたたかい感じですから、焼き物、炊き合わせ、揚げ物といったあたたかい料理にしっくりします。

磁器は染付、青磁、白磁、祥瑞、伊万里、鍋島、九谷、京の清水焼などで、石物といわれ、かたくて冷たい感じがするので、どちらかというと、お造りや酢の物に向きます。

備前、伊賀、南蛮のように焼きしめたものは、陶器といっても石に近いほどかたいので、水でぬらすと涼しげな感じが出て、ギヤマンとともに、夏のお造りによく用いられてます。

冬はあたたかい感じがよいのですが、土物ばかりでは歯切れが悪くなってします。また石物が多すぎると、やわらかさに欠けて、軽薄になります。

花鳥風月の文様はだれにも季節がわかります。桜と紅葉を描いたものを「雲錦」といいますが、これは春と秋、もう少し広く春から秋まで、松と菊なら秋から春まで使えます。

文様がなくて、大ぶりのたっぷりしたお椀や底の深いものは、あたたかい感じがありますし、薄手で浅いものや、小ぶりなものはあっさりしているので、暑い時分に向きます。

披露宴のようなおめでたい席に、蓮や辻堂は喜ばれませんし、仏事に鶴や松竹梅のようなおめでたい文様は避けなければなりません。その状況、料理によって器を選ぶ必要があります。

 

夏ならではの食材をいろいろとご用意して、皆様のお越しをお待ちしております。

 

 

瓢喜 香水亭 新橋店  料理長

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